食事改革で「怪我減・時短・出力向上」 トヨタ自動車硬式野球部が"食トレ投資"を決断した理由
「練習量は足りている。なのに、勝ちきれない。」
トヨタ自動車硬式野球部──レッドクルーザーズが最初に見直したのは、技術でも戦術でもなかった。日常の"ロス"だった。
きっかけは「調理の30分」だった。
選手たちの1日を改めて観察してみると、ある景色が見えてきた。毎朝30〜40分かけて自炊する。栄養バランスは各自まかせ。疲労が翌日に残り、怪我で離脱する選手も出る。 ひとつひとつは小さなことに見える。でも、積み重なると話が変わってくる。 たとえば、1日30分の調理時間。年間に換算すると約180時間。日数にして約7.5日分になる。これは「7.5日分の練習時間を失っている」のと同じだ。さらに怪我による離脱が重なれば、戦力が落ちるだけではない。代替選手の育成、指導計画の組み直し、チーム全体のリズムが崩れていく。 藤原航平監督はこう振り返る。
「強化とは練習を増やすことではなく、無駄を減らすこと」
トヨタレッドクルーザーズ 藤原航平監督
つまり食事管理は、単なる「体づくり」の問題ではなかった。チーム運営そのものの課題だったのだ。
「意識」で解決するのをやめた。
アスリートの食事管理には、よくある落とし穴がある。「もっと栄養を考えて食べよう」「朝食を抜くな」「炭水化物だけで済ませるな」──言葉にすれば、どれも正しい。けれど、それが毎日の行動に変わるかというと、なかなかそうはいかない。 オフシーズンは夕方まで仕事がある。練習に行く日は自分で食事を準備しなければならない。コンビニ弁当や炭水化物中心の食事に頼ってしまう選手が、どうしても出てくる。 スポーツ栄養の世界で20年以上サポートしてきたFAMスポーツ栄養アドバイザー・大前恵もまさにこの壁を感じ続けてきた一人だ。
「栄養に関するアドバイスをすることはできる。でも、実際に食事を摂ってもらうのは本当に難しい。」
FAMスポーツ栄養アドバイザー大前恵
アドバイスはできる。でも、実行してもらえない。これは、選手の意志が弱いのではない。仕組みの問題なのだ。
FAM BOXの導入「仕組み」で解決する
そこでチームは、ひとつの決断をした。食事を「努力」や「意識」の問題にするのをやめる。仕組みで解決する。それがFAM BOXの導入だった。 FAM BOXは、プロ野球・Jリーグ・日本代表クラスの栄養サポート実績をもとに開発された冷凍宅配型の食事サービスだ。スポーツ栄養アドバイザーが設計したメニューが冷凍で届き、選手はレンジで温めるだけで、栄養設計された食事を摂ることができる。 各メニューにはカロリー・たんぱく質・脂質・炭水化物がg単位で明記されており、必要グラム数に合わせて量を調整することもできる。また、公式サイトでは数問の質問に答えるだけで自分に合ったメニューを見つけられる「食事診断」も無料で提供している。初めて利用する選手でも、何を選べばよいかすぐわかる設計だ。 メニューのバリエーションにも工夫がある。通年販売のラインナップに加え、夏・秋など季節ごとに旬の食材を使ったメニューが登場する。毎日続けることが食トレの本質であり、飽きない仕組みはそのまま継続率の高さにつながる。
2名の専門家が支える、品質への信頼
FAM BOXを監修するのは、スポーツ栄養の第一線で活躍してきた2名だ。 一人は、管理栄養士の大前恵。株式会社明治に所属し、2000年よりアスリートやチームへの栄養サポートを開始。プロ野球・各種プロスポーツの選手を20年以上にわたってサポートしてきた。和田毅の現役時代を食の面から支えた人物でもある。 もう一人は、元福岡ソフトバンクホークスの投手・和田毅。早稲田大学時代に六大学野球の通算奪三振記録を更新し、プロ入り1年目から新人王を獲得。MLB挑戦・手術・リハビリを経て復帰し、2019年の日本シリーズで完全復活を印象づけた。現役時代から食と栄養を徹底して管理してきた経験が、FAM BOXの設計に反映されている。 「一流が実際に食べているものを、自宅で手軽に」というコンセプトは、この2名の存在なしには成立しない。
レッドクルーザーズで起きた変化
FAM BOXを導入したレッドクルーザーズで、実際に起きた変化は明確だった。 まず、調理時間がほぼゼロになった。これまで毎朝30分かけていた自炊が、レンジ数分に変わった。年間180時間が、練習・休養・準備に使えるようになった。次に、栄養摂取量が「見える化」された。各メニューにカロリー・PFCが明記されているため、選手自身が日々の摂取量を把握できるようになった。感覚に頼らない、数字に基づいた体調管理が可能になった。 そして、体重と筋量が増加した。必要な栄養が毎日安定して摂れることで、トレーニングの効果がそのまま身体に反映されるようになった。怪我も減った。コンディションが安定し、離脱する選手が目に見えて減少した。さらに、指導者側の管理負担も軽くなった。「ちゃんと食べているか?」を個別に確認する必要がなくなり、指導そのものに集中できる環境が整った。 同じ練習時間でも、出力が上がる。同じ選手でも、怪我が減る。同じスタッフ数でも、管理が楽になる。
選手・監督の声
トヨタレッドクルーザーズの選手たちはこう話す。
「食材の買い出しや調理の負担がなくなり、レンジだけで質の高い朝食が摂れるようになりました。」
トヨタレッドクルーザーズ 後藤凌寿選手
「栄養表示が明確なので、正確な摂取量の管理ができ、体調管理の納得感が上がりました。」
トヨタレッドクルーザーズ 三塚武蔵選手
そして藤原航平監督。
「FAMの温めて食べれるところは、選手には助かっている。オフシーズンは仕事中心で夕方まで仕事があります。どのタイミングで食事が摂れるかってところが難しい中で、温めて食べれるというのは大きい。食事が変わってから、練習の質そのものが変わった。」
トヨタレッドクルーザーズ 藤原航平監督
これは福利厚生ではない。「競技への投資」だ。
FAM BOXの導入を「選手へのケア」や「福利厚生」と捉えるチームもあるかもしれない。でも、レッドクルーザーズの事例が示しているのは、もっとシンプルなことだ。 練習を増やさずに、強くなる方法がある。年間180時間の調理時間削減、怪我による離脱の減少、コンディションの安定、栄養管理の標準化。どれも、勝つための投資としてリターンが見える施策ばかりだ。「食事は個人の問題」──もしチーム内にそんな空気があるなら、それは今日から変えられる。

